2023.11.13

9-jour.ブランドストーリーを公開しました

サスティナブルな日本古来の染色技術を使ったカラーデニムブランド「9-jour.」天然染料・生分解性素材から成るデニムパンツができるまで。

 

 

 

私たちデノボストラクチャーは、2003年に代表の髙田浩が創業し、国内外で数々の有名アパレルブランドの企画やモデリングを手がけている服飾企画会社です。

 

このたびメイドインジャパンとサスティナブルな素材、製造プロセスにこだわった自社初のブランド「9-jour.」(クジョー)を発表しました。https://9-jour.jp/

 

ファーストコレクションは、天然染料・生分解性素材から成るデニムパンツ。日本古来の染色法をもとに開発した独自技術「新万葉染め」を世界唯一行う工房で染色をします。色鮮やかな9-jour.オリジナルカラー21色を、受注を受けてから1着ずつ丁寧に染色を行う完全受注生産で、モードなルックと着心地、クオリティ、環境配慮の全てを兼ね備えた妥協のないものづくりで、より良い未来を見据えたファッションのあり方を提案します。

 

 

 

地球環境も人も犠牲にしないファッションを実現し、業界の課題を解決したい

 

 

私たちが新しく自社ブランドを立ち上げたのは、業界が抱える様々な問題に加担せず、環境も人も犠牲にしない、カッコいいファッションを未来に繋げるためです。

ファッション業界は、染色で使用される化学物質による水質汚染や、過剰生産による労働問題、大量廃棄など、大きな課題を抱えています。そのため、多くの企業で地球環境や労働環境に配慮した取り組みや、サスティナブルファッションの開発などが進んでいます。私も服作りを30年以上続けてきた身として、地球環境も人間も犠牲にせずに服を生み出したい、という強い思いを持ち続けていました。コロナ禍で、それまでのように慌ただしく企画を考案する状態ではなくなり、未来へ向けた服作りについてじっくり向き合えたことが、良いきっかけだったのかもしれません。私にも子供がおり、子供たちが生きる未来に恥じない仕事をしたいと思い、行動に移しました。

 

 

 

故郷でサスティナブルファッションのヒントに出会う 

 

 

 

色々とアイデアが浮かぶ中、まず最初にクリアしたかったのは染色による環境汚染の問題です。ファッションに綺麗な色は欠かせませんが、合成染料を用いずに色を楽しむ服を完成できないかと模索するところから始めました。そして、実家のある京都へ帰省した際に目にした着物から着想を得たのです。古くから人は、植物を利用して糸や布を艶やかに染色し、世代を超えて着る衣服を作っていたことを再認識したのです。そこで古来の染色に着目し、現代のファッションに落とし込むことができないかとリサーチを始めました。

 

 

 

 

天然色材を用いた染色法を探す~「新万葉染め」との出会い

 

 

最初は漠然と天然色材を扱っている染色工場などを訪ねてみましたが、例えば「草木染め」と呼ばれていても、化学染料を使って色を固定させていたり、染色の方法がいわゆる「職人の技」で再現性が乏しかったりと、環境とファッションを共存させることが難しいものばかりでした。それでも諦めずに探し歩き、「新万葉染め」と出会いました。

 

 

 

「新万葉染め」は、日本古来の伝統工芸染色技法の研究をもとに、現代技術を用いて開発された新しい染色法で、従来の方法と比較して使用する色材の量が10分の1ほどで、かつ常温での染色を可能にした素晴らしい技法です。三重大学の木村光雄教授らによるプロトコールが完成しており、その開発メンバーの一人、京都川端商店の川端康夫さんと出会ったのです。見せていただいた色見本は、色数も多く、本当に鮮やかで十二単を彷彿とさせました。さらに驚いたのは、粉砕した草花を三原色の原理で色材を混ぜ、新しく色を作り出すこともできるということです。古来から受け継がれた染色法に巡り会えた感謝の気持ちとともに、この技術をファッションを通して未来へ繋ぎたいという思いが強くなり、絶対にこの染色法で商品を開発しようと心に決めました。

 

 

 

 

褪色の懸念を払拭する逆転の発想。愛用することで価値が高まるカラーデニムを提案

 

 

しかし、川端さんからは「服作りにうちの染色は使えない」と断られてしまいました。なぜなら、「天然色材を使用した染色は色調の統一性に多少のばらつきがあることや、時間とともに褪色してしまうため、過去に沢山の返品を受けたから」という理由でした。

そこで思いついたのがカラーデニムです。デニムは丈夫で、長く愛用することで色が褪色したり生地が消耗することで逆に価値が増す一面もある、世代を越えるアイテムです。しかも染め直しが可能です。川端さんを説得し、最終的には快く染色を請け負っていただけることになりました。土に還る素材で丁寧に手作りされたものは、修復も行いながら使い続け、世代を越え愛され続ける力を持つのです。ブランド名の「9-jour.」も平安時代から染色法を現代まで守り続けていた故郷への感謝と想いを込めて、京都の九条家から命名しました。

 

 

染色による水質汚染がないか。三重大学と共同研究を行う

 

 

天然染色といっても様々で、この「新万葉染め」が本当に地球を汚さないのか、検証する必要がありました。そこで、三重大学の市川俊輔准教授に協力していただき「新万葉染め」の染料について、安全性と生分解性の評価を行うため、共同研究を実施しました。研究の結果、染色排水の中で魚の胚が発育することを認め、環境負荷の少ない染色であることを確認することができました。

 

 

 

 

生地、糸、付属品にいたるまで全てが土に還るように

 

 

次に生地をどうするかです。世代を越えるデニム、つまりビンテージになり得る普遍的な形と素材を求めていたので、その風合いを再現でき、かつ生地の生成過程で漂白剤などの化学薬品を使用していないものが条件でした。こちらはアフリカのブルキナファソ国からフェアトレードで入手している綿を原材料とするデニム地を見つけることができました。9-jour.のデニムはよく見ると細かい褐色の点がありますが、これは綿花の萼(がく)の部分で、漂白処理を施していない証です。

 

 

 

縫製は、以前から知り合いだった岡山のデニム縫製工場にお願いすることにしました。こちらの会社では、9-jour.のコンセプトに強く賛同していただき、通常の縫製に使用されるポリエステルの糸ではなく、生分解性のあるテンセル糸で特別に縫製してくださることになりました。

  

 

 

内側につけるブランドネームや品質表示タグも妥協せずに、綿やキュプラ素材を使用し、文字の印刷は大豆を原料としたインクを用いるソイプリントで行いました。ボタンやファスナーは金属を使用していますが、取り外すことが可能なデザインにし、細部まで素材や設計にこだわり抜きました。

 

 

 

自社の強みである「形」への感性を活かす

 

 

素材や製造過程が環境に良くても、デニムの形(パターン)がカッコよくなければお客様に選んでいただけない。ここからが長年服作りをしてきた私たちの腕の見せ所であり、9-jour.の製品作りで最も力を入れたところです。

私たちは形へのこだわりは非常に強く、お取引先の皆さまからも高く評価を受けてきました。これだ、という形になるまで何度も試行錯誤を繰り返し、カジュアルはもちろんドレスシーンにも対応できる商品に仕上がりました。

9-jour.のデニムパンツは、脚の内側のラインが綺麗に出ることと、ヒップラインが高くすっきりとしたフォルムが特徴です。また、コラーゲン加工により肌に優しくソフトな質感を実現しました。これは着用しないとなかなか実感できないので、ぜひ多くの方にショールームに足を運んでいただき、体験していただきたいと思っています。

 

 

 

イタリアの世界最大級のメンズプレタポルテの見本市「PITTI IMAGINE UOMO」(ピッティ・イマージネ・ウォモ)へ出店

 

 

 

さて、ようやく9-jour.のデニムパンツが完成し、世の中へ出す時が来ました。商品を販売する方法は多くありますが、9-jour.が形になりつつある時に既に決めていたことがあります。それはまず始めに、イタリアの世界最大級のメンズプレタポルテの見本市「PITTI IMAGINE UOMO」(ピッティ・イマージネ・ウオモ)へ出すことです。それは、毎年世界中から1000を超えるブランドが一堂に集結する、ファッション業界の要となるこのイベントに出店が認められ、良い手応えがあれば、自信を持って9-jour.を皆様へお届けできると思ったからです。

そして本当に嬉しいことに多くの良い反響をいただきました。イタリアはもちろん、フランスやアメリカやインド、日本などから来ているバイヤーやファッションジャーナリストの方々に注目され、メディアに取り上げていただいたり、現地で生の声を聞くことができました。

少し面白かったエピソードもあります。イベントの3日目に、ファッションを専攻する学生さんが次々に9-jour.のブースに立ち寄ってくださいました。どうしてかな、と思っていると、ある方が「ピッティで見るべき7つのブランド」というファッションサイトの記事を見せてくれました。なんと、出店している多くのブランドから選ばれた7つの中に9-jour.が上げられていたのです。そこには天然の草花を使った染色技術や生分解性素材にこだわった製造プロセスについてや、美しいヒップラインやレッグラインを作り上げるためにミリ単位での調整までこだわっていることについての高評価が記されていました。これまで3年以上を費やした商品開発の苦労が報われた瞬間でした。

 

 

※「PITTI IMAGINE UOMO」9-jour.来場者の方々と

 

 

 

 

9-jour.のこれから"多くの人に着ていただくことで本当のサスティナブルが実現する"

 

 

「PITTI IMAGINE UOMO」では、サスティナブルであることは少し前までは"トレンド"でしたが、今ではそれが"常識"という認識に変化しつつあるように感じました。これからの服作りでは、環境を壊さず、資源を使いすぎない、持続可能であることが"条件"となるのではないでしょうか。9-jour.を着ていただくと、天然の色の奥行きや生地の変化を肌で感じ、原料に対して自ずと気持ちが向いてきます。それは少し大袈裟な言い方かもしれませんが、自然を感じることであり、人を含めた全ての自然が地球上で循環することの一端を担うことにつながると考えています。9-jour.が一人でも多くの方と出会い、ファッションを楽しみながら、未来へと続く自然の循環を共に行えることを願っています。

 

 

 

購入方法・ショールーム

 

 

9-jour. オフィシャルサイト(https://9-jour.jp/)にて発売中。

東京・表参道の体験型ショールームでは、全色・全サイズご試着していただけます。どなたでもお越しいただけますので、ぜひ9-jour.の世界観と、デニムパンツの鮮やかなカラーリング、シルエット、履き心地を体験しにいらしてください。

ご来場予約はこちら(https://coubic.com/9-jour)

 

※写真は全てメンズモデル

PRICE: MENS ¥50,600〜¥110,000 (税込)

     WOMENS ¥48,400〜¥107,800 (税込)

COLOR:21色・プリント

SIZE:各3サイズ展開