この文章を書いている今、僕は数日前に完成した会社のサロンで色付いたばかりのデニムたちを眺めています。
天然物質のみで染められた世界初のカラーデニムがやっと形になり、ここから新しい旅が始まろうとしています。
9-jourが生まれるまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。何しろ、一切の化学染料を使用せずに多くの色彩を作り出し、先染めのデニムでは糸を染色するところからのスタートです。天然染料は色調が安定せず、全く染まらなかったり、染まっても思い通りの発色ではなかったり、何度失敗したかわかりません。完成した製品の生分解性を実証するために研究機関とも連携をしました。本当に多くの挑戦の連続だったと思います。
以前なら、制作の途中で代替する何かへ変えていたかもしれません。しかし、今回は絶対に妥協せず最後まで完成させる必要がありました。
“ファッション“というと好きな色やデザインの服を着て自分を表現したり華やかなイメージがありますが、ご存じの通り、その背後には様々な問題を抱えています。製造過程における染色で使用される化学物質が、水質汚染を引き起こしていたり、安価な服作りにより、途上国では労働環境が損なわれています。そしてこのように地球や人が犠牲となって作り出された服の半分以上は着られることもないまま廃棄されているのです。
僕は30年以上アパレル業界にいて、服の持つパワーを実感し服作りを愛する一人の人間として、地球環境も人間も犠牲にならずに生み出されるカッコよくて着続けられる服を作り出したかった、これが9-jour誕生の原動力です。
9-jourというブランド名も、平安時代からの染色法を現代まで守り続けていた故郷への感謝と自身のルーツに対する想いから命名しました。
最後に、このページを読んでくださっている皆様へお願いがあります。9-jourが本当の意味で完成するにはまだ足りないことがあります。それは、“循環“です。少し想像してみてください。地球から生み出された染料と自然素材でできたデニムが形を成し、皆さんのクローゼットで長い年月活用されて後には地球へ帰っていく、、またそこから染料が作られて、と、輪廻転生のように地球と人とを循環する。ファッションを楽しみながら未来へと続く循環を回していくために一人でも多くの方に参加していただけたなら、こんなに喜ばしいことはありません。
まだよちよち歩きの9-jourですが、多くの方が着てくださることで一歩一歩力強い歩みとなることを願っています。
2023年5月1日
9-jour.代表 高田 浩